第26回日本医学会総会
人間科学 日本から世界へ 〜21世紀を拓く医学と医療 信頼と豊かさを求めて〜
わが国の医学と医療は戦後の経済成長とともに発展・充実し、国際的に見ても遜色のない水準にある。
わが国の医療は全体としてみれば優れた成果を示し、国際的な評価には極めて高いものがある。
これはひとえに、医療提供者と国民のたゆまぬ努力と負担によって実現してきたものである。
 しかし、今日、効率的で良質かつ安全な医療の提供や患者の納得・満足、情報提供などの上でさまざまな課題を抱えており、こうした個別具体的な問題について国民は大きな不満と不安を感じるようになってきている。
 そして、21世紀に入った今日、生命科学の急速な進展、少子高齢化と経済不況の同時進行、医療制度改革の本格化など、医学と医療を取り巻く環境は大きな変革期にある。
 われわれは、21世紀初の第26回日本医学会総会を「人間科学 日本から世界へ〜21世紀を拓く医学と医療 信頼と豊かさを求めて〜」をテーマに開催した。医学と医療はまさに、21世紀の社会において信頼と豊かさを求めていくための重要な基盤であるとの認識に立って、21世紀にめざす理想の医療について次のとおり宣言する。

平成15年4月6日
第26回日本医学会総会

会   頭 杉岡 洋一
副 会 頭 平野  実
副 会 頭 片山  仁
準備委員長 名和田 新

福岡宣言

一.     21世紀にめざす理想の医療は、心を持った人間を見失うことのない、生命の尊重と個人の尊厳に基づく患者中心の医療である。そのためには、これまでの「おまかせ」医療から患者本位の選択できる医療の実現に医療提供者、国民ともに努力しなければならない。また、高度化・複雑化する医療の現状について情報が開示され、国民は負担を含めた理解に立ち、医療提供者とともに支え、創る医療を実現しなければならない。

一.     国民・患者は、「自分の健康・生命は自分で守る」という意識改革が必要である。そのためには、医療提供者はもちろん行政、保険者は疾病予防・健康づくりのための施策を進めて、国民を啓発・援助しなければならない。患者の積極的な参加があってこそ、医療提供者は充分な医療の提供が可能となる。

一.     医療提供者は、医療の透明性を確保するとともに、その説明責任(アカウンタビリティ)を果たさなければならない。そのためには、情報開示やEBM、診療ガイドラインによる医療の標準化などを積極的に進める必要がある。医療提供者の教育はその基盤を作るための重要な課題であり、たとえば平成16年度に開始される医師の卒後臨床研修の必修化においても研修医の身分保証は国の責任において行うべきである。

一.     医療提供者は、効率的で良質な医療提供のための組織の運営・統治(ガバナンス)に努めなければならない。そのためには、チーム医療の実現、医療機関の機能分担と連携、かかりつけ医の環境整備、保健・医療・福祉の総合的提供、効率的な組織運営などを進める必要がある。

一.     医療提供者と国民・患者は、安心で健康なライフサイクルを支える社会の共通資本である国民皆保険の維持・発展に努めなければならない。そのためには、医療費の効率的な使用、保険者機能の強化、世代内・世代間の負担と給付の公平化などによる保険財政の安定化を進める必要がある。



この「福岡宣言」は、第26回日本医学会総会の最終日にあたる4月6日(日)に行われた特別シンポジウム「日本の医療の将来」の討議内容その他を集約し、今後の日本の医療の指針となることを願い、同総会の「閉会式」の席上にて発表されたものです。